歯周病はなぜ怖い病気なのか
歯周病は、歯と歯ぐきの間から入った細菌が歯肉に炎症を起こす病気です。重症化すると口の中だけに留まらず全身に悪い影響を及ぼすことが歯周病の恐ろしい点です。歯と歯ぐきの間にできる溝を歯周ポケットと呼び、歯の全周、全歯5mm以上ポケットがあると重度の歯周病と診断されます。5mmの歯周ポケットが全ての歯にあったとすると、全歯28本分で約28cmとなり、病巣の大きさは72cm2(手の平大)に達します。もしこの大きさのガンがお腹の中にあったらどう感じるかということを想像していただければと思います。しかし現実には「歯周ポケットが5mmです」と言われてもあまり危機感を覚えない方が大半です。
歯周病は心臓病や動脈硬化、糖尿病などのさまざまな病気を引き起こす原因になります。周りの家族に看病などで迷惑をかけないためにも、歯周病のケアは非常に重要です。
高師ほんごう歯科クリニックの歯周内科
歯周病の治療を行う前に、歯周病の原因菌である歯周病菌群を、飲み薬と歯に直接つける薬の併用により、菌の活動を抑え込みながら、歯周病治療を行う方法が歯周内科治療です。
まず、歯周病とは、歯の周りの組織(歯周組織)が、細菌や真菌などにより破壊され、やがて歯を支える事に歯周組織が耐えられなくなり、歯がグラグラと動きだし、最終的には歯を抜くことに繋がっていく病気です。妊婦さんの重度歯周病により早産の原因の一つになってしまうことは、歯科の世界ではよく知られています。他にも、歯周病は、糖尿病、心筋梗塞、リュウマチまでにも悪影響をおよぼすことがわかっています。これらは不思議なことではありません。口の中は毛細血管が豊富で、少しの刺激で歯ぐきから出血してしまう歯周病の状態では、常に体の中に菌が入り込む準備が出来ている状態に他ならないのです。そして血管の中を菌が通って全身に悪影響を与えます。
人間の体の部位で歯ブラシくらいの刺激で出血することは、はっきり言って異常な状態なのです。そのような部位は、他のどこにも存在しません。それでも痛みなど自覚症状がほとんどないのが一番厄介なのです。
歯科医療保険制度内での歯周病治療の実態
歯周病は細菌感染症です。細菌感染症なので、当然、抗菌薬により細菌の活動は抑制できます。しかし、日本の、現在の歯科医療保険制度では歯周病の治療方法は以下のように決められています。それはまず、歯周病があるか、ないかを検査します。
国民の8割以上が歯周病にかかっているとわかっているのにです。私たち歯科医師や歯科衛生士、歯科医療の関係者が、患者様のお口の中をみれば、中等度以上の歯周病が発症しているお口かどうかは検査しなくても大体わかります。レントゲンを撮れば一目瞭然です。それをわざわざ、出血の伴う恐れがある検査をして、歯周病かどうかを判断しなくてはなりません。そして歯周病と診断されれば、歯周病菌のことは完全に無視した、物理的な歯の掃除に入っていきます。
これは、完全に菌の存在を無視しています。手術で言えば、メスを入れる患部を消毒しないようなものです。いい結果は望めません。歯科の保険内での治療では、これと同じようなことが行われているのですが仕方ありません。厚生労働省が決めた保険制度は絶対で、そのガイドラインで診療することが保険診療を行う事の条件なのですから。初期の軽い歯周病なら患者様自身の協力の上、これでも治ります。ただし、これでは中等度以上の歯周病は治せません。病態が軽減するだけで、歯周病は進行します。
歯周内科治療の意義
歯周内科治療は、歯周病の原因菌である歯周病菌群を、飲み薬と歯に直接つける薬により、菌の活動を抑え込みながら治療を行う方法です。これ以上の歯周病の進行を食い止め、大切な歯が新たにグラグラと動き出してくるリスクを大幅に低くするメリットがあります。
成人の8割以上が感染している、強い感染力を持つ歯周病菌です。よほど気を付けないと、再感染してしまう可能性は高いですが、慢性的な炎症を一旦消滅させる意義は絶大です。歯肉の炎症が慢性的に継続してしまう事により、歯周組織は破壊されていくからです。
歯周病は、歯周病菌だけの仕業ではないことが、当院の院長が所属する国際歯周内科学研究会の研究によってわかってきました。その成果により、歯周病菌が歯ぐきに入り込みやすい環境を作っている菌の存在がわかりました。その菌とは、皆さんも耳にしたことがある真菌です。そう、水虫の原因菌、カンジダです。ご存知の通り水虫は、治りにくい皮膚の病気です。そんな真菌が口の中の歯周病菌をサポートしていたのですから、歯周病もやはり治りにくい、いや治らない病気だったのです。たしかに一度、歯周病によって破壊された歯を支える骨(歯槽骨)は戻りません。ですから、本当の意味では歯周内科治療でも元通りには治せません。ですが、再感染さえしなければ、これ以上急激に歯周病が進行し、大事な歯が新たにグラグラと動き出してくるリスクが、大幅に低くなるメリットは絶大な意味を持ちます。
勘違いをしないでいただきたいのは、たとえ歯周内科治療が成功し、良好な経過をたどっていたとしても、これで歯を磨かなくてもいいという意味では決してありません。虫歯菌は存在します。きちんと歯を磨けなければ、虫歯になります。さらに、いつ歯周病菌に再感染するかもわかりません。歯周内科治療のメンテナンスを怠れば再感染していても、自分では気づけません。定期的な顕微鏡での、細菌の動きのチェックが必要不可欠なのです。残念ながら、今の国の保険制度では歯周病の進行は止められません。患者様自身が色々な知識を持ち、より良い治療を自ら選択できるようになっていくことのお手伝いが少しでもできれば、歯科医療従事者として、幸せに思います。
注意
歯周内科治療は自由診療です。健康保険は効きません。そのため費用が8万円と高額になります(歯周内科治療の導入時に5万円、歯周内科治療終了時に3万円)。希望者のみですが、治療終了後の歯のメンテナンスも自由診療になります(4~6か月に一度、一回7,000円です) なお、ご不明な点がございましたら、お気軽に当院の歯科医師にお問い合わせ下さい。
内服薬は抗菌薬になるため、肝機能の低下など副作用がある場合があります。持病をお持ちの方はカウンセリングの上で処方させていただいております。また妊娠中の方はご利用いただけません。
歯周内科治療は自由診療です。健康保険は効きません。そのため費用が10万円と高額になります(歯周内科治療の導入時に8万円、歯周内科治療終了時に2万円)別途各種検査費用。希望者のみですが、治療終了後の歯のメンテナンスも自由診療になります(4~6か月に一度、一回7,000円です) なお、ご不明な点がございましたら、お気軽に当院の歯科医師にお問い合わせ下さい。
内服薬は抗菌薬になるため、肝機能の低下など副作用がある場合があります。持病をお持ちの方はカウンセリングの上で処方させていただいております。また妊娠中の方はご利用いただけません。
歯周病の保険治療
歯周病の保険治療では、厚生労働省の定めたガイドラインに沿って治療する必要があります。不必要な検査や数回に分けて治療を行う必要があり、特に中度以上の歯周病を完治することが難しいのが現状です。数週間に1回の割合で一部分の治療しかできないことから、非常に時間がかかってしまい、感染を抑えることが難しい治療になります。
歯周病の自費治療
一方、自費治療では料金は高くなりますが、全顎一度に歯周病菌を取ることができるため、保険治療よりも効率的な治療が可能になります。飲み薬と歯に塗る薬を利用した歯周内科治療の併用も可能です。
防災バッグには歯ブラシとエピオスを
一度進行してしまった歯周病を完治させることは非常に難しいですが、予防することは可能です。そのためには歯科医院に定期的に通ってクリーニングをするだけでなく、適切なホームケアの習慣をつけることが大切です。当院では、院内で治療前のうがいに使っていただいているエピオスウォーターを家庭でも取り入れることをおすすめしています。また、災害が起こった際に外へ持ち出すための防災バッグには、必ず歯ブラシと、可能であればエピオスウォーターを入れておくことをお願いしています。被災時の食事には糖分が多く虫歯になりやすい菓子パンや保存食などが多く、口腔内が不衛生な状態で長い時間を過ごすと虫歯になってしまうほか、細菌を多く含んだ唾液や食べ物が気管に入って起こる「誤嚥性肺炎」を起こす恐れがあります。災害時の備えとしては水や食料、トイレなどが重要視されがちですが、オーラルケアのための道具も忘れずに準備しておくことで非常時にも口内の健康を保つことができます。
口臭が気になる方へ
当院では口臭に関する相談もお受けしています。ほとんどの場合は歯周病と虫歯が原因ですが、胃腸などの内臓疾患が関係しているケースもまれに見られます。原因については診察を行うことである程度突き止められるので、虫歯や歯周病がある場合はそちらの治療を進めながら、患者さまそれぞれの状態に合わせたアドバイスをさせていただいています。口が乾くと悪化するため、水分を多めに取るようにすることと、舌ブラシを使った舌磨きが口臭予防に効果的です。気になることがありましたら一人で悩まずにお気軽にお問い合わせください。
歯周病にならないために
歯周病の症状には様々な症状がみられます。
- 歯ぐきの赤腫
- 歯ブラシの際に血が出る
- 歯ぐきが痩せたように感じる
- 歯が伸びたように感じる
- 腫れた部分が痛い などといった症状です。
まずは正しい歯みがきが大切です。当院ではブラッシング指導をしており、歯ブラシの当て方や力加減など、歯ぐきや歯を傷つけない正しい磨き方を指導しています。歯周病菌はほとんどの人が持っているものです。歯周病になるかならないかは、環境や生活習慣が大きく影響します。まずは歯周病にならないよう、日頃の歯磨きから気をつけることを意識し、予防していきましょう。